Youは何しに海外へ。YouはどうしてPathfinders’運営者に。 -後編-

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2019年12月、Pathfinders’運営メンバー全員が東京に集まって行った座談会の後編です。

前半はこちら↓

pathfinders.hatenablog.com

 

前編の3人に引き続き、以下2人の「海外に赴いたきっかけ」と「この活動に参加することを決めた原体験」をメインに、後半では研究者の仕事の仕方まで話が広がりました。

それでは続きをどうぞ!

 

・あや:2017年夏より職場から派遣され、USCロースクール(LL.M.)に留学。インターンなどを経て2019年夏に帰国し、現在は職場に復帰。

ちひろ:2017年9月末から家族の留学に帯同し、2020年6月末までLA在住。サンタモニカカレッジのプログラム(アントレプレナーシップ専攻)やアートマネジメントのオンラインコースを修了した後、現在は株式会社wevnalの監査役を務める傍ら、バレエ・ダンス界の法務支援に従事している。

 

1回日本から飛び出してみるとたくさん気づくことがあるから、とにかく1回外に出ることの後押しをしたいなと思うようになったかな。(あや)

あや:一番最初に海外に行ったのは、中学2年のとき。サンフランシスコの近くの街に1ヶ月くらい短期留学に行ったんだよね。

 

ちひろ:それは学校の制度とかで?

 

あや:学校ではなくて民間のプログラムなんだけど、半額は自己負担、あとの半分は町が助成してくれるという制度があった。なんで田舎町にそんな制度が当時あったのかはわからないのだけど。笑

 

ちひろ:そのプログラムはどうやって見つけたの?

 

あや:小学校5年生くらいのときに、スチュワーデスのドラマか何かを見て、世界を飛び回るのかっこいい、世界を飛び回るなら英語が必要だ!と思って、家のそばの英会話教室に通い始めたんだ。そんな子供だったから、親がこのプログラムを探してきてくれたんだよね。

そのプログラムに行ってみて、カリフォルニアっていつも晴れているし、みんな笑顔だし、雄大な自然やおおらかな人間性にも触れて、自分の知らない世界や人たちに初めて気づいた感じだった。それで、そのときはまだ何になりたいとか具体的なものはなかったけど、将来海外で働きたいなと漠然と思い始めたんだよね。

それで、大学も英語学科に入って、大学在学中に長期留学をしたいと思っていたのだけど、大学生活が楽しすぎてあっという間にタイミングを逃して就活の時期に入っちゃったんだよね。それで就職までいってしまったんだけど、仕事を始めてからもやっぱり留学に行きたいとの思いは断ち切れなくて。自費でいくか職場の制度を使っていくかというところで、職場の制度で行けそうな目処が立ったから、最終的には職場から機会をいただいてロサンゼルスに留学したんだ。

1年以上海外に暮らすのはこのときが初めてだったから、たくさん気づきもあって価値観も広がり、それまで国内も点々としてきたけど、やっぱり海外に出るとこんなにも考え方が違う人がいるんだって気づいた。あとは、留学生にもたくさん知り合って、特に日本から近い中国や韓国の留学生のガッツを見ていて「すごいな」と思ったし、ロサンゼルスみたいに日本人が多い地域であっても、中国人や韓国人のネットワークはもっとすごいんだということがよくわかった。日本人はもっともっと海外に出ていかないと、取り残されてしまうんじゃないかと危機感を持ったんだよね。

1回日本から飛び出してみるとたくさん気づくことがあるから、とにかく1回外に出ることの後押しをしたいなと思うようになったかな。

そんなときに、ちひろちゃんに会って、「何か留学生を支援する活動をしたいね」と話したのが、この活動を始めるきっかけになった。その後、とある会で他のみんなと出会って留学について話したことが、このメンバーが集まるきっかけになったよね。

 

なつこ:あやさんとちひろさんは何で出会ったんですか?

 

ちひろ:あやちゃんも私もサンタモニカに住んでて、サンタモニカ会やろうよって話になり、何人か当時サンタモニカ在住の日本人で集まってご飯を食べたのが「はじめまして」だったよね。

 

かい:そこで留学生支援やろうって話になったんですか?

 

あや:いや、その時にはそんな話さなかった‥いつ話始めたんだろう。思い出せない。笑 でもその後何回かご飯食べたよね?

 

ちひろ:うん、食べたと思う。笑

 

あや:それでどこかのタイミングで話が盛り上がって、とりあえず一回留学アンケートを取ってみようっていう話になったんだよね。でも、そこに至るまでの経緯みたいなのがそんなにはなかったような‥。2人とも社会人になってから留学に来たという共通項はあるし、何かできることはないかなって話す中で、他の人はどう考えているのか、アンケートで聞いてみようという話になったね。

そうしたら、留学に行って一回海外に出た人はみんな「一度海外に出てみたらいい」って思っていることがよくわかった。

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留学って何がいいの?

かい:海外って何がいいんですかね?

 

あや:やっぱり価値観が広がることじゃないかな。

 

なつこ:いろんな人に会えるしね。

 

さとし:自分が研究業界にいたら一生出会えないような人にたくさん会えたよ。そして、業界は全然違うんだけど、意外と友達になれるよね。笑

 

一同:そうそう。笑

 

あや:いろんな考え方の人がいるし、いろんな考え方があっていいんだと気づけることがまず大きいよね。狭いところにいたら「これしかない」って思っちゃうけど、そんなことないってことに気づける。

 

さとし:一番価値観が広がったのは、自分はイカの研究をしているけど、そのことを話すと、「イカのここが好き」とか「こういうところが嫌い」とか、「イカって足何本?」とか聞かれて、一般の人たちがイカのことをどう思っているのか聞けることがすごく面白い。いろんな人のイカの意見を聞こうと思ったら、SNSでアンケートを取るとか街角インタビューするとかしかないと思うけど、留学に来たら様々なバックグラウンドの人たちから、イカがどう見られているのか聞くことができる。これってすごく価値観が広がるなと思った。

 

あや:自分の中のコアな部分は変わらないと思うんだけど、それがどういう風に花開いていくかは出会いによっても大きく変わると思っていて、海外に出た方がその選択肢の幅や多様性は圧倒的に広がるなと思ってる。いろんな文化や人種の人がいるし、いろんな人同士がミックスされてさらに多様性が広がって面白い意見が聞けるなと。

 

なつこ:アメリカってなんでもかんでもディスカッションじゃないですか。それを続けていると、常に自分の意見を考えているし、それを言葉に出すことがクセになる気がする。人から意見を聞いたときそれに対してどう思うかも考えるし、それを発してみることが増えたなと思うんですよね。日本でももしかしたら色んな考えの人に出会っていたのかもしれないけど、自分自身が考えたり発したりすることを意識していなかったから気づけなかったのかなという気もします。アメリカの文化によって、自分の吸収力も増えて変わったのかなと思います。

 

あや:われわれはみんなロサンゼルスだけど、アメリカの違う場所に行ったらまた感じ方は全然変わるんだろうね。

 

なつこ:あと、この5人がロサンゼルスで出会ったからこの活動に発展しているっていうところありますよね。たぶん日本で出会っていたらこの活動をやるって話にはならなかった気がする。

 

あや:そうそう。ロサンゼルスを選んだのは正解だったと思う。いろんな国の人がいるし、日本人だけでもいろんな人が集まっているから。

 

なつこ:今あやさんはこの活動の代表をやってくれていますけど、そのバイタリティはどこにありますか?

 

あや:「日本人がんばろうぜ!」だと思う‥。

 

一同:熱いね!笑

 

あや:もうちょっと説明すると、周りにいる友達で、将来に不安を持っているけど簡単には人生は変えられないと思っている人たちがいたら、「そんなことないよ。環境は変えられるし、もっといろんな選択肢があるよ。」と伝えたいなと思ってる。

日本にいながら環境に変化を起こすこともできると思うし、海外に出ることはあくまで選択肢の1つだと思ってる。でも、思いっきり環境を変えるのであれば海外ほど変えられるところってないと思うから、タイミングが合うのであれば、ぜひ留学をおすすめしたい。自分の周りの人にいつも笑顔でいてほしいっていうのがあるね。

50年くらい経ったときに、日本人でよかったと思っていたいし、日本がそう思える国であってほしいと思ってる。日本人が、国内でも国外でも日本人として誇らしいと思いながら活躍してほしいなって。

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かい:たまに考えるんですけど、日本の科学力ってどこで判断されるんでしょうね。日本から発信される科学の成果なのか、世界に散らばる日本人が発信する科学の成果なのか。どんなに日本人が出した成果でも、一般的には海外の大学に所属していたらその大学の成果として評価されてしまうと思うんですよね。

 

さとし:僕ら研究者は特許とか研究結果はすべてに大学に帰属することに承諾するっていう誓約書も書かされているよね。

個人の感覚としては、キャリアの中で大学を転々とするものだし、研究成果は自分の名前で発表するから研究と個人が紐付いているという感覚ではある。だから日本に居ようがアメリカにいようが自分の成果であることには変わりない。その一方で,「日本人なのになんで日本じゃ無くて海外で成果を出したの?」と思われる部分もあるとおもう。かい君の考え、面白い!

 

かい:日本で結果を出すことが日本の国力を示すことになるのか、世界で日本人がコミュニティを作って結果を出すことが評価されるのか、考えるんですよね。

 

さとし:日本人が日本の大学で何か結果を出すことに対しては、メディアも取り上げてくれるし、一般の人にも認知度を上げやすい方法だと思うんだよね。他方で、海外のラボで僕たちみたいに働いていると、あまり注目はされないかもしれない。日本のメディアで注目されなくても,海外での日本人の評価は上がると思う。例えば,ラボのメンバーに「日本人ってよく働くな」と思ってもらえて、ちゃんと成果も出せば、後輩たちがアプライするときにも「お、日本人はちゃんとやってくれるから採用しよう」って判断してもらえるという話を聞いた。これは意味があると思う。

 

海外に出ることに怖い気持ちもあったし、何よりキャリアが途切れるのが恐ろしかった。けど、行ってみたら最高だった!(ちひろ

ちひろ:私の場合は、周りに留学経験ある子がたくさんいたんだよね。高校のころも、学年200人のうちロータリーとか使って10人くらいは留学していたし、帰国子女がいたり海外からの留学生が同じクラスにいたり、留学はかなり身近な存在ではあったと思う。

だけど、私自身はというと、クラシックバレエを本気でやってて毎日踊り狂ってたから、バレエなしで留学するなんてことは1ミリも考えたことがなくて。バレエ留学は一瞬考えたけど、結局実力が足りなくて行きたいと思える海外のバレエ学校には行けないとわかったから、具体的に検討することもなく、大学に入っちゃった。

それに、私の場合は下からエスカレーターで大学まで行ってしまったから、受験英語すらやってなくて。大学院受験をするときも、とにかくTOEICの点数が必要ない大学院を探しに探して選んだくらい。笑

仕事を始めてからも、完全に国内の仕事をしてたから、海外留学の必要性を感じたことも一切なく。その後、企業の法務部に入ったときに、留学のチャンスが自分に巡ってきて、ここで急に留学が自分ごとになったんだよね。ただ、ここまで英語を全くやってこなかったツケをここで払わされて、本当に本当に大変で‥。結局仕事とTOEFL受験の両立ができずに倒れちゃって。

それで自分自身が会社の留学制度を使って留学に行くことはその時点であきらめたんだけど、そうしたら今度は家族が留学に行くことになるという…。だから、私の場合は、一度も自発的に留学に行こうと思ったことはなくて、会社から言われて、とか家族が行くから、とかすべて外的要因で留学が現実化した点がみんなとは全然違うよね。

しかも、家族が留学するから「ついて行くか否か」という選択を迫られたときも、当初私は全然行きたくなくて(笑)ちょうど企業の法務部に転職して3年くらい経ったところだったんだけど、やっと現場レベルのことは自分でできるようになってきて、経営層に対してどう法務支援をしていくのかを考える案件にアサインしてもらえるようになって、自分自身の視座も上がり始めて楽しくなってきたところだったんだよね。

それに、みんなみたいに短期で海外に行ってみて開眼するような経験もなかったから、海外に出ることに怖い気持ちもあったし、何よりキャリアが途切れるのが恐ろしかった。

 

なつこ:えー意外!逆だと思ってた!

 

ちひろ:今の私からは信じられないよね(笑)でも当時はそんな感じで、結論出すぎりぎりのタイミングまで、「行きたくない!」ってずっと騒いでた。

でも、会社の上司は、「期間限定なんだから行ってきたらいいじゃない。」「嫌になったら帰ってきたらいいんだから。」って言ってくれてね。

その言葉もあって、最終的には、一緒に行くと決めたんだけど、とにかくキャリアに穴ができないように何かしないと、という脅迫観念に駆られて、家族の留学計画に影響が出ない範囲でできるカレッジ留学をすることに決めたんだ。

で、行ってみたらめちゃ楽しかった(笑)

 

一同:(笑)

 

ちひろ:特に、International Businessっていう科目がとても面白くて。その授業は、社会構造や政治、経済・税金の仕組みなどいろいろな観点から世界の国や企業を比較してみるというものだったんだけど、とにかく日本の登場回数が多かったんだよね。

高度経済成長期のときにこんなに頑張ってこれだけ成長した、とかカイゼンやJust in Systemでトヨタはこんなに成長したとか良い意味で取り上げられることもあれば、バブルがはじけてから今までは元気がない、人口減少してるしこのまま衰退フェーズだといったマイナスの事象も沢山取り上げられてた。

知っていることも多かったんだけど、それが世界でどう評価されているかは考えたことがなかったから、「日本って世界から見ても注目してもらえることやってきた国なんだ。私はそんな国に生まれたんだ。」という事実に初めて気づいたんだ。それは、やっぱり視野が広がる経験だったと思う。

あと、自分が学生の間に留学していたら、こんなに気づくことはなかったんだろうなとも思ったの。私の場合は日本での社会経験があって、日本社会のシステムについてはある程度わかっていたから、カレッジの授業の吸収力が上がった気がした。だから、もっと社会人留学というキャリア選択を広められたらいいなって考えるようになった。

もう1つ面白かった授業は、起業家のマインドを学ぶ授業で、5人のグループで5ドルで何でも良いからビジネスをやってみる(参照:「パートナーへの帯同でキャリアを諦める必要はない-自分にしかできない道を求めて-」)という課題を通じて、とにかくなんでも行動を起こしてみれば、気付きや学びがあるということにも気づけたよ。

それで、その授業の最終課題が自分で新しいビジネスを考えて事業計画を作ってレポートにまとめるという内容だったの。どんなビジネスにしようかなと考えたときに、せっかく社会人留学を広げられたらなと思ったのであれば留学に関連するビジネスを題材にしようと思ったんだよね。それで、以前あやちゃんとは留学ビジネスの話もしていたから、改めて連絡してFacebookを通じてアンケートを取ることにしたんだ。その結果は、最終レポートにも入れた気がする。

でも、あやちゃんとの会話は、アンケートを取ったきり、2人がロサンゼルスを離れたこともあって一旦止まっちゃって。そのあとは、みんながあやちゃんと知り合ったことをきっかけに、あやちゃんから誘ってもらって今に至るよ。

 

なつこ:きっかけがカレッジのレポートだったとは!

 

ちひろ:たぶんカレッジに行かなかったら、「とりあえずアンケートを取ってみよう」とアクションを起こすことも考えなかったと思うんだけど、何でも動いてみたら何かしらの結果につながるということに気づけていたから、まずはやってみようと思えた気がする。

日本にいたら、社会に出ると周囲で知り合いになる人もなんとなく経歴の似た人になってくるし、なんとなくこの先の人生も決まっているような気がしていて、それは当たり前だと思っていたのね。でも、全然違うことをちょっとやってみたら、こうやってみんなとも繋がれたし、Pathfinders’として形にもなったし、「これって人生の幅が広がるし面白いじゃん!」ってことに気づいて。「みんなももっとやったらいいのに!」って思うようになった。

特に、私みたいに家族の留学きっかけで留学に行く人って、アイデンティティ・クライシスに陥ったり、海外の慣れない場所で生活していくだけでいっぱいいっぱいになってマイナスな気持ちでいっぱいの人ってきっと実は沢山いると思うのね。でもせっかく海外に来たのであれば、自分が主たる留学者でなくても、早くマイナスの気持ちから抜け出して、その後のキャリアや自分の人生にプラスになることって何だろうって前向きに考えた方が絶対に良いから、今悩んでいる留学帯同者へのアプローチとかもできたらいいなと思ってる。

あと、ちょっと視点がずれるけど、ロサンゼルスって日本人も沢山いるし、日本語だけ使って日本人のコミュニティだけで生きていくことも容易だから、ロサンゼルスに行っても新しいことを吸収できずに帰っていく人も相当数いると思うんだよね。吸収できるか否かって結構自分次第なところもあるし。留学の時間を最大限活用しないってすごいもったいないことだから、その点に関して何かできないかなぁという思いもあるかな。

 

さとし:留学すること自体が目的になっている人っているよね。

 

ちひろ:そうそう。結局留学って手段でしかないから、留学で何を得てくるのかという目的設定はとても重要だと思ってる。その目的設定があるか否かで、アンテナの張り方が変わって、得られるものの量も質もすごく変わると思うから。留学って本当にピンきりだと思うけど、意味のある良い留学のサポートができたらいいなって考えているよ。

 

なつこ:2人がアンケートを取っていて、すでにアクションを起こしていたということは、この取組みに参加しようって思える信頼につながった気がします。アンケートを実施すること自体は、本当に簡単なことだけど、その一歩の行動を起こせるのは一握りだと思っていて。そういう人がいるなら何かできるかも、と思いました。

 

あや:あのアンケートのフリーコメント欄にたくさん回答をいただいたのは嬉しかったし、何かやろうと思う原動力になったよね。

 

ちひろ:そうそう!フリーコメントを付けようって言ってくれたのはあやちゃんだったけど、本当に入れておいてよかった!アンケートをやってみてわかったのは、圧倒的に留学に行った経験のある人の方が回答してくれて、多くの人がもっと留学する人が増えてほしいっていう強い思いを持ってること。一方で、留学に行っていない人はそもそも回答してくれていない人がほとんどで、留学した人としていない人とでの温度差をすごく感じたな。

 

さとし:いわゆる強化説だとおもう。一度,一歩踏み出した人はどんどん次の一歩を踏み出せるけど、まだ一歩を踏み出していない人はずっと踏み出せないままになるという。だから、どうにか一歩を踏み出すことが重要だと思う。そうすれば、あとは自然にどんどん踏み出していくだろうし。留学に行く人は皆,「価値観が広がる」というけど、何がきっかけで広がるのかを切り口に聞いてみるのは面白いかもね。

 

なつこ:ちひろさんは、カレッジに行ったあとは、「こういうことしてみたい」とか「海外にもっと住みたい」とか新たな思いはありましたか?

 

ちひろ:それでいうと、ロサンゼルスに行ってよかったことの1つとして、自分の人生を考える時間ができたというのがあって。日本にいる時は、毎日目の前の仕事をこなすことで精一杯で、自分の人生を考える時間なんてなかったんだよね。でも、こっちに来たら圧倒的に時間はあるから、「自分の人生って何だろう」「この後何をやっていきたいんだろう」「どうやって社会に貢献していきたいんだろう」とか、ノートにたくさん書いて。特にね、雨の降らないロサンゼルスで雨が降ると気分が落ちるから、「私ここで何やっているんだろう…」って思ってね(笑)そんな日にひたすら自分に問い続けたり。

その結果、私の場合は「やっぱり自分にしかないバレエの経験を活かそう」と思って、日本のバレエ団に連絡してみるっていう一歩も踏み出してみた。その結果、どんどん話が広がって、今は一時帰国して打ち合わせしたりしているくらいだから、一歩踏み出すことの大切さは実感しているかも。

一歩踏み出すって自分が動くだけだから何もリスクがないし、ダメ元でうまく行ったらラッキーくらいに思ってやれば何も失うものもないって思えるようになって、一歩を出すことのハードルはすごく下がった気がする。

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あや:社会人で時間ができるというのは本当に大きいよね。

 

かい:それは、アメリカに来たから時間ができたっていうことですか?

 

あや:いや、仕事から離れて学生になったということが大きいかな。

 

さとし:もし日本で会社を辞めて国内で大学院に入ったとしたら、会う人ががらっと変わるわけではなさそうだよね。それまでとコミュニティは変わらないだろうから。そうすると、海外に来ることで変わる点も大きいだろうね。

 

なつこ:あと、アメリカの大学は夏休みが日本に比べて圧倒的に長いので、もちろん遊びにも行くんですけど、考える時間が増えたなぁと思いました。仕事をしていると心の余裕もないし。

 

さとし:留学、いいこと尽くしだね!

 

あや:自分を見つめ直す機会ができることは、すごく意味があると思う。

 

なつこ:研究者の場合はどんな変化がありますか?

 

さとし:日本の大学っていることに意味があるんだよね。

 

ちひろ:日本の会社と一緒!

 

さとし:そう。朝9時から夜8時くらいまでいることね。「あいついつも長い時間頑張っているな」と思われると、たとえ業績がなくても、どうにかしてやるか、という感じになる。

 

かい:海外ではないですよね。時間かけて何も業績が上がってなかったら、できない奴だなと思われます。業績がすべてです。

 

さとし:週1の進捗を報告する会議で何も発表できなかったら、いないものとして扱われて議論にも全く参加できないし。何かしらデータとか結果を出して発言しないと。日本だったら参加だけしていれば良いけど。出席点みたいな評価はあると思う。

 

なつこ:大学の授業も同じですよね。成績評価にも発言率が含まれてますし。 みんなが反応してくれるし嬉しいんですけどね。研究の世界の評価はどこで行われているんですか?

 

さとし:プロジェクトは研究責任者が計画を決めて申請し、採択されればプロジェクトの資金を出してもらえる。あとは、申請書に書いた計画どおりプロジェクトを進めて、その成果が論文や本ということになるね。その成果物がないと、せっかく資金を使ってやったのに、何も社会に還元できていないという評価になる。学会発表ではだめで、複数人の査読を経て世に出す論文にしないと意味がない世界なんだ。その計画を予定より早めて成果を出したりすると、「あいつすごい」という評価になったりするとおもうよ。

 

かい:あとは、良いものが必ず評価される世界ではないです。良いものを書いても、良い先生から出していなければ全く見てもらえません。高名な先生の元から出せば、ランクの高いジャーナルに載りやすいとかがあるんです。逆に、大して良いものでなくても、有名な先生の名前があれば、とりあえずみんな論文は見るということもあります。なので、留学で良い環境にいられるかということもとても大事です。

 

なつこ:日本にいたら、今言っているジャーナルとかには載せられないものなの?

 

かい:世界でもかなり有名な教授の研究室にいない限り、難しいと思います。 

 

なつこ:私の専門の公共政策なんかは、社会のシステムが違うから、アメリカで学んだことをそのまま日本で利用することは難しいんだけど、研究の世界は世界がフラットだよね。だから、留学すると、世界の幅がストレートに広がりますよね。

 

ちひろ:研究者も、海外に出ない理由はないね!

 

編集後記

前編・後編通して、私たちの留学したきっかけやPathfinders’の活動への思いをお伝えさせていただきました。

みんなバックグラウンドはばらばらですが、留学の良さを伝えたいという思いは同じです。少しでも多くの方にお届けできれば良いなと思います。

 

質問やご興味のあることがありましたら、Facebookのメッセージや問合せのリンクからいつでもご連絡ください!